猫の膀胱炎
こんにちは!
こにし動物クリニック
今日は7月7日なので、七夕に関する小話を一つしたいと思います。
皆さんもご存じの通り、七夕とは織姫と彦星が「1年に一度だけ」天の川を挟んで会うことを許された日です。
ここだけ聞くと恋人達の悲恋のお話に感じます。
ですが、星の寿命を人間の寿命に換算すると、織姫と彦星はおよそ「3秒に一度」会ってることになるらしいです。
そう聞くと、悲恋のお話が一転、ただの仲良しカップルのお話になってしまいますよね。
さて、先日こにし動物クリニックがキャットフレンドリークリニックに認定されたことはご存知でしょうか?
名前の通り猫に優しく、猫の診療において高い水準の知識と技術を持った病院が取得できる規格です。
そこで今回は猫に多く見られる疾患「膀胱炎」についてご紹介したいと思います。
何らかの原因によって膀胱の粘膜に炎症が起こる病気を膀胱炎と言います。
膀胱炎を発症すると、頻尿、トイレにいる時間が長い、一回の尿量が少ない、血尿、尿の臭いが変わる等の症状が見られます。
猫の膀胱炎は原因によって大きく3種類に分けられます。
1.結晶性膀胱炎
結晶とは、尿中に出現する砂粒状の構造物で、顕微鏡で見るとガラスの破片のような形をしています。
尿中に見られる結晶には様々な種類がありますが、結晶性膀胱炎の約90%が上の写真にあるシュウ酸カルシウム結晶とストラバイト結晶が原因となります。
【シュウ酸カルシウム結晶】は、尿のpHが酸性だと出来やすくなるのが特徴です。
内科的な治療方法はなく、結晶が自然に排出されるのを待つしかありません。
結晶が大きくなり、尿石となった場合には尿道から排出することができないので、外科手術で摘出します。
【ストラバイト結晶】は、尿のpHがアルカリ性だと出来やすく、逆に酸性だと溶けていく、という特徴があります。
尿のpHを酸性に傾けるフードを食べることで、内科的に治療することができます。
尿石となった場合はシュウ酸カルシウムと同じく、外科手術が必要になることがあります。
2.細菌性膀胱炎
体の外から尿道を通って膀胱に感染(逆行性感染)した細菌が毒素を産生することによって、膀胱の粘膜に炎症を引き起こします。
細菌性膀胱炎の厄介な点は、細菌が産生するウレアーゼという酵素によって尿のpHがアルカリ性になってしまうことです。
「1.結晶性膀胱炎」で説明した通り、尿のpHがアルカリ性になると、ストラバイト結晶が作られやすくなってしまいます。
つまり、細菌感染によって、「細菌性膀胱炎」と「結晶性膀胱炎」が同時に発生してしまう可能性があるということです!
抗生剤の投与で治療できますが、近年は抗生剤が効かない耐性菌も出現していて問題になっています。
3.特発性膀胱炎
「特発性」とは、簡単に言うと「原因不明」という意味で、未だにはっきりとした原因が分かっていません。
しかし、猫の膀胱炎のうち約60%が特発性膀胱炎とも言われており、出会う頻度としてはものすごく多い疾患です。
今のところ特発性膀胱炎の主な原因は「ストレス」だと考えられており、ストレスを和らげるフードを食べることで内科的に治療することができます。
トイレの環境がストレスの原因になっていることが多く、トイレの数を増やしたり、トイレの種類を変えると改善するケースもあります。
猫の膀胱炎は原因をしっかり見極めて治療すればそれほど怖い病気ではありません。
ですが膀胱炎が悪化すると、炎症による腫れや尿石が原因で尿道閉塞を起こし、尿が全く排泄できなくなってしまうこともあります。
尿道閉塞は早く詰まりを解除しないと命に関わる危険な病気です。
なので、「トイレの様子がいつもと違うぞ?」と思った方はすぐに病院に連れてきてください!